令和最初の第55回理学療法士国家試験を、国試塾塾長が分析してみた。

今年も理学療法士、作業療法士を目指す人たちにとって、一年で最も熱いこの日がやってきました。
今年も我が国試塾ネクストステージのチラシを用意しておりましたが、昨年の反省から午前問題の解答を一部載せたところ、ものの5分ですべてのチラシが捌けてしまいました。
もっとチラシを用意しとくんだった…。
この試験の結果次第で、4月から有資格者としての道が開けるのか、それともただの人なのかが確定するので、皆の真剣度も半端なものではなかったですね。
さっそく、オリンピックイヤーのこの試験がどんなものだったか、述べていきましょう。
1問目からそれですか!?

受験生の中には、
試験前日は心穏やかに過ごし──
当日の晴れやかな朝空を見上げて、自らの前途を重ね──
試験会場に入りながら静かな躍動感に包まれ──
そして午前の第1問をを見た瞬間──
──ンじゃ、ゴレぁ!?
と、愕然とした方も少なくないのではないでしょうか?
いやわかります。
いきなり最初の問題が、テッパンのの関節可動域ではなく、あんな不意打ちで来るとは、だれも予想していなかったでしょう。
ボクシングのプロテストに例えると、1ラウンド目のゴングの残響が消えないうちに、いきなり上段蹴りをこめかみに見舞われるようなもの。
──私は最初に受験生に問題を見せられた時に、作成者の悪意(※個人のイメージです)を感じましたよ。
私だったら、もう一瞬で戦意を喪失していたことでしょう。
ツワモノは即座にスルーしてあとからじっくり料理するところですが、慣れていない人は精神的に転倒を強いられ、そのあとの問題にも影響を及ぼしそうです。
でもよく考えてください。
1問目が可動域の問題という決まりなんてもともとなく、そんなものはこちらの勝手な思いこみであり、独りよがりな考えです。
実際に、可動域以外の問題から始まった試験は、過去の国家試験にもあったわけですから。
一番問題なのは平常心を失うこと。
動揺すると、以降の解ける問題も解けなくなってしまいますので、手ごわい問題はとりあえず見なかったことにして、さっさとザコ問題にとりかかりましょう。
第55回理学療法士の合格率予想

前述しましたが、難度でいえば、第55回理学療法士国家試験は、気休めにも簡単だったとはいえませんでした。
現役の学校教員の見立てでも、おそらく8割を切るのではないか、とのことです。
まあ、学校によっては体感は変わるでしょうけど。
私自身、問題を解いてみて思ったのですが、単にX2問題が多かったとかということではなく、問題そのものの難度が上がった印象は否めません。
問題は、来年以降の難易度はどうなるのかということ。
昨年にもこちらの記事で同じような予想をしましたが、来たる2027年には理学療法士の雇用においての需要と供給が逆転し、2040年には供給が需要の1.5倍になると、厚労省の分科会で指摘されています。
つまり、資格を与える国自体が、理学療法士国家試験の合格率をある程度さげ、一定の数値で維持させる可能性があるということです。
心くじくわけではありませんが、今後は理学療法士になる間口が狭まってくるかもしれません。
来年以降に国家試験を受ける人は、今までのような過去問をトレースするだけの勉強法では太刀打ちできなくなる可能性が高くなるかもしれないので、これまで以上に道すじを立てたやり方でなければならないと思います。
とはいえ国家資格は最強!

不安材料ばかり並べ立ててしまいましたが、別にこれから資格を取ろうとしているあなたの心を折ろうとしているわけではありません。
言うまでもなく理学療法士は国家資格ですが、そもそも『国家資格』って何でしょう?
国家資格とは
国家資格とは、法律に基づいて国や国から委託を受けた機関が実施する資格のこと
資格の王道より引用
つまり、理学療法士とは、『理学療法士及び作業療法士法』という国の法律に基づいて国から保証された地位のこと。
しかもいったん取得してしまえば、当人が死亡するか、重大な違法行為を行わない限りは失効されることのない、永久ライセンスなわけです。
昨今では理学療法士の世間での認知度は高まっていますので、あなたが理学療法士というだけで、周囲のあなたを見る目も良い方に変わってくるでしょう。
こんなおいしい資格、サッサと取らないで、いつ取るのかって感じです。
国家試験対策に気持ちを切り換える難しさ
「明日からやる」という心の弱さ

私が塾長を務める国試塾の夏期講習を去る8月末に行った時のこと。
私は後輩PTの同期が、何回も国家試験にトライするも未だに理学療法士になれずに悩んでいると聞き、夏期講習への参加が刺激になればと思い、声をかけたところ、
いやあ時期的にまだ早いんで、秋口くらいから本腰を入れようと思うンスよ。
その後この人は、その秋口になれば冬になってからと言い、冬になったら年が明けてからと述べたあげく、今回の国家試験で資格を取ることができませんでした。
なぜなのか。
夏期講習に参加しなかったからではありません。
それは、自分の『習慣』を変える作業を、何かしらの理由をつけては後回しにしてきたからです。
分かりやすい例えでいえば、やるやる詐欺のできないダイエット。
試験勉強にしてもダイエットにしても、つね日ごろの少しの習慣で、最後の結果が大きく変わるという意味では同じです。
しかし、その「少し」の習慣を変えるのは、意外と簡単ではないんです。
意欲のスイッチの入れ方

モチベーションというのは、つくづくロウソクのロウに似ていると思います。
ロウというのは固まったままでは絶対に燃えない。
燃やそうと思えば、まずは熱でとかす必要があります。
それからロウソクの芯のような媒体にしみ込ませて、はじめて燃えるわけです。
日々の習慣を変えることも、最初は義務でしょうが、続けているうちにそれが当然になっていきます。
ロウソクで言うと、最初のロウを溶かすための作業です。
つまり、「今スイッチが入った!」という瞬間などはなく、気がつけば勉強することが朝起きてから夜寝るまでの『当然』となっているんです。
若干根気がいるのは、それが『当然』になるまで『義務』を続けること、つまりロウを溶かす作業を粛々と行うことなのです。
最強のモチベーションの維持方法とは?

モチベーションという言葉が適切かどうかは分かりませんが、勉強が当然となった時点で、ロウソクはすでに燃焼しています。
燃焼してしまえば、その熱が周りのロウを溶かし、それが新たな燃料になります。
ただし途中でやめてしまうと、その瞬間からどんどんロウは冷えて固まっていく。
一度ロウが固まってしまうと、また1から溶かす(義務)作業から始めなければならない。
つまりモチベーションを最低限のところで維持するためには、燃焼(習慣)を持続させる必要があります。
これはしんどそうに思えますが、固形のロウを溶かす作業に比べれば、費やす精神的エネルギー的にはかなりエコなんです。
今後の出題傾向と対策
さて、一般的な意欲のキープについて述べてきましたが、今後の国家試験はどうなっていくのか。
これはあくまでも予測の一つですが、私は以下の3つのジャンルでさらに掘り下げた問題が増えるのではないかと思います。
❶ 高齢者リハ
❷ 癌リハ
❸ 神経難病
❹ 薬学
私の教員としての先輩が、❷に関しては、遠からず骨シンチやPETなどの読影問題が出てくるのではないかと言っていました。
❹については、リハ適応疾患とかかわりのある薬剤の作用・副作用は抑えた方がいいでしょうね。両作用によって引き起こされる、リハ実施上のリスクとかも。
すみませーん、私たち別に薬剤師になりたいわけじゃないんですけど~?
わかります、よーくわかります!
フィジカルの専門家になろうとしている我々が、なにが悲しくて薬剤について勉強しなければならないのか?
そういいたい気持ちはわかりますが、 今どきのリハ現場では、薬品の効用について理解しておかないと、リスクをいたずらに増やすばかりで、まったく役に立たないわけです。
そして昨今の過去問題、特に実地問題をみていると、臨床力が備わっていて当然、というものが増えてきているんです。
──その上で、ひとこと助言させていただいてよろしいでしょうか?
泣こうがわめこうが出る時は出るんだから、ツベコベ言わずに腹くくって覚えんかい!!
以上(笑)!!
まとめ

長々と書き連ねましたが、わかりやすくまとめましょう。
これからの国試を乗り切るには
- 一日も早く習慣を変える
- 変えた習慣は2日以上空けない
- 過去問をなぞるだけの勉強をしない
- 直近10年の過去問から、最近の出題傾向を察知する
- どうしてもやる気が出なければ、予備校などに通い強制力を高める
このリストをみて、「フツーの対策じゃん!」と思った方。
そうです、ぜんぜん奇をてらった内容ではありません。
でも逆に言うと、奇をてらったことをせず、王道の対策法を地道にやることが、成功の最短の道です。
言っておきますが、ワープみたいな楽な道はありませんからね。
ただ王道の対策法に必要なのは、潤沢な時間です。
1にも書いたとおり、1日も早いスタートが肝要です。
「まだ早くね?」と思ったあなた。
その思考が、すでに危険信号だと自覚してください。
3と4に関しては、また特集を組みますね。
ではまた!!
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