訪問を検討しているセラピスト、必見。

こんにちは、あっちゃん(@onlygreen1001)です。
皆さんは在宅での仕事に携わったことがありますか?
私は2003年当時、病院勤務でしたが、上司の勧めで同法人の訪問看護ステーションに週二日で入ったのが、在宅との初めてのかかわりでした。
それまでは自分のホームグラウンド(病院)で患者を迎えるスタイルでしか仕事をしたことがなく、アウェー(相手の自宅)に単独でおもむくことに、戸惑いと不安を感じていました。
しかし私は、利用者の家庭にセラピストが訪問し、生活そのものを変容させていくというダイレクトな介入方法に、徐々にではありますが、のめり込んでいくことになります。
それから十数年、私は訪問スタッフとして様々な経験し、事業所の設立と運営にも携わってきました。
私の周りにも、訪問業務に関心を持ちつつも二の足を踏んでいる方が多いように思います。
そんなセラピストに、今回は訪問リハの魅力だけではなく、賢い事業所選びもアドバイスできればと思います。
訪問看護の需要
いま訪問看護は、どれほど世の中に求められているのでしょうか?
私の住んでいる街にも、訪看ステーションが開設され、セラピスト専門の求人広告も、着実に訪問関連が増えてきていると思います。
実際の事業所数はどうでしょうか——
介護保険制度が施行されて以降、訪問看護ステーション数は着々と増え続けており、特に昨今の増加は、ここ5年で40%増となるなど、めざましいものがあります。
ただしこれは供給面での話。
利用者数の推移も見てみると——
こちらも年々増加傾向にあります。ここ5年で34%増となっています。
2015年度の場合、ここに医療保険の17万人が加わりますので、総数はほぼ55万人となります。
団塊世代が後期高齢者と突入しつつある現状で、少なくとも2025年までは、この増加の流れがいきなり変わる事はないと思われます。
業務内容
利用者宅への訪問
文字通り、訪問業務の根幹です。
問診、バイタル測定、リハメニュー実施、記録作成が通常の流れになるでしょう。
忘れがちですが、ここに移動も入ります。
手段は自動車やバイク、自転車、公共交通機関などまちまちですが、自動車やバイクの場合は、事故や違反キップを切られるリスクがあるため、安全運転を心がける必要があります。
書類作成
日々の記録の他、ケアマネジャーや主治医に対する計画書や報告書を作成します。
担当利用者数が増えると、それだけ負担が大きくなります。
ただ、計画書と報告書の作成は、利用者へのサービスを見直すいい機会になります。
毎月同じ文章をコピペで繰り返す人を時々見かけますが、まったくおススメできません。
書類に目を通したケアマネが、自分が依頼した仕事に対して、そのセラピストが真摯に対応してくれていないと印象を受ければ、二度と仕事が来ないとも限らないからです。
広報活動
これは非常勤に回ってくることは滅多にありません。
具体的には、地域包括支援センターやケアプランセンター、医療機関の地域連携室などに赴き、自分の事業所の存在とセールスポイントをアピールするというものです。
殆どのセラピストが未体験な業務であるため、いきなりやれといわれても戸惑いしかないでしょう。
ただ、事業所によっては必須業務の場合もありますので、面接時に確認したほうがよいでしょう。
それ以外の広報活動としては、私の職場ではよく行っていますが、市営の会議室などでケアマネを対象に事例紹介や勉強会などをしています。
こちらは自分の得意分野を話せる上に、直後に参加者から依頼が入ることが多く、前述の飛びこみの広報に比べてハードルが低く、しかも効率的です。
訪問スタッフに求められるもの
第一印象の良さ
いきなりソコ!?、と思われるかもしれませんね(笑)。
しかし、よそ様のご家庭に、単独で入っていくのが訪問というもの。
様々な個性から好印象をもって迎え入られないと、はっきりいって使い物になりません(酷)。
そもそも自分を快く思っていない方の家に毎週1~3回行くなんて、はっきりいって針のムシロ状態だと思いませんか?
ただ、印象の良し悪しは素質だけではなく、テクニックでリカバリー可能なのでご安心あれ。
あと、全身から滲み出る清潔感も印象を左右する要素ですので、自己だけでなく他の人にもチェックしてもらってください。
自分のためにも自分自身を磨き上げましょう。
介護保険制度や住環境整備の知識
訪問業務を行う上での基本ルールや加算については、おっつけ勉強しても遅くはありません。
ただし、住宅改修や福祉用具の選定については別です。
特に介護保険申請をし、介護度が決まってホヤホヤの方との初顔合わせの際は、ほとんどの場合、住環境整備といえばセラピストの専売特許でしょ!!と言わんばかりにケアマネから意見を求められます。
そうなってから眼を白黒させたり、背中で滝を作ったりすることのないように、福祉住環境コーディネーター3級程度の知識は備えておきたいところです。
そもそも環境整備による安全の確保であるトップダウンと、リハビリによる身体機能の向上であるボトムアップとのバランス感覚は、訪問スタッフとしては必須の能力と言えます。
オールマイティな対応力
選り好みしなければ、の話ですが、あらゆる症例のリハビリテーションが依頼として入ってきます。
私がリーダーになる前の半年前は、利用者の年齢層は0~102歳で、これほどの層の幅広さは、今までの経験でもありませんでした。
老人リハ、小児疾患、循環器、呼吸器、運動器、CVA、難病などなど、治療内容も多彩さを求められます。
ここまでで「自分にできるだろうか」と不安になる方もいるかもしれませんが、経験のない疾患を無理に受ける必要はないと思います。
私自身も、訪問に携わるまでは小児施設で働いたことはありませんし、教員時代に教えたことすらありませんでした。
ただ私は、今こそが自分の弱点を潰す好機だと考えるようにし、事業所持ちで小児疾患の研修会に参加して再教育を受け、担当できるまでに至りました。
新規依頼があり、担当選定の段階で、オールマイティで診ることができるセラピストの方が有利なのは、言うまでもありませんよね?
基本的なPC操作スキル
「パソコンは苦手だから無理!!」という方はいらっしゃいますか?
すみません、こればかりはどうしようもないのです。
前述の書類作成のためには、絶対にキーボード操作が必要ですので。
今や病院も電子カルテの時代——。
医療従事者ならパソコンくらい最低限は触れるだろう、と高をくくっていると、「私、PCは苦手なので」といっそ堂々と言い放つ方がたまに現れるんです。
今まで業務に差し支えなかったのかしら、と思ってしまいます。
コミュニケーション力
当然ですが、訪問すれば利用者と1対1ですので、ダンマリではお互いつらいものがあります(笑)。
といって、ただ喋ればよいというものではありません。
実際に私の知り合いで、「こちらの興味のないことを延々とお喋りされるのが苦痛だ」という理由で、担当を代えさせられたセラピストもいます。
じゃあ、どうすれば!?、と言いたくなりますが、相手がどれだけお話し好きか、興味を示す話題はなにか、利用者さんの基本情報やことばのキャッチボールで嗅ぎ取っていくのです。
前述のセラピストは、相手があまりおしゃべり好きではなかったため、沈黙をとにかく埋めようとして焦った挙句、自分の好きな野球ネタを話し続けていたとの事。
これではキャッチボールも何もあったものではありません。
そんなことよりも、自分が現に行っているリハビリについて、ちゃんと説明してくださいって話です。
説明の仕方も独りよがりな内容ではダメで、
- 何のリハビリメニューなのか(目的)
- なぜその利用者にそのメニューが必要か(理由)
- そのメニューを行うと、どうなるか、またはどうなったか(事実)
この三本柱での説明が相手を「納得」させるために最低でも必要です。
この「納得」があるかないかで、相手からの信頼度は天と地ほどの差があります。
なぜなら、どんな寡黙な利用者でも、自分のリハビリの効果と、理由と、見通しを知りたくない方はいないからです。
訪問に限らず、どこでも同じだと思いますが——。
揺るぎない平常心
訪問先も「現場」である以上、何が起きても不思議ではありません。
身内が目の前で急変した時、家族の動揺と不安はレベルマックスでしょう。
そんな時、セラピストがその家族と「周章狼狽」というお題で汗だくのダンスを踊るのは論外です。
緊急時の訪問スタッフの役割のひとつには、そういう家族の不安をできるだけ和らげることも含まれます。
あらかじめ利用者の現病歴と既往歴をアタマに叩き込んでおくのは当然のこと、事業所の緊急時マニュアルにも目を通しておきましょう。
先日も私は訪問先で利用者の急変に遭遇しましたが、看護師との連携協力の甲斐もあって迅速かつ適切な対応と取ることができました。
後日、家族から「我々だけだったらどうなっていたことか。。」と感謝され、自分がその場に居合わせてよかったと心から思ったものです。
実際、「誰がやっても同じ」仕事なら、われわれ専門職が訪問する意味はありませんからね。
今後の展望と、賢い事業所選びとは?
冒頭でも述べた通り、昨今の訪看ステーションとその利用者数は明らかに増えています。
セラピストが訪看ステーションを設立し、成功を収めているという話も珍しい話ではなくなりました。
国の方針の一つである『地域包括ケアシステム』の介護予防の観点から、訪問リハは大きな働きが可能となるはずです。
収入面をみても、セラピストの就職先としては非常に魅力的でしょう。
しかし、ちょっと待ってください。
私としては、これだけの材料で訪問へ身を投じるのは、リスクが大きいと言わざるを得ません。
ここであらためて、全国訪問看護事業協会の2016年度のデータによると——
新規登録数・・・1,234件
廃止事業所数・・・462件
休止事業所数・・・224件
休廃止の事業所数が新規登録の半数にも登っています。廃止のうち、開設年度中の廃止は50件もあるのです。
なぜこのようなことになるのかというと、以下の理由に集約されます。
人員基準以上の看護師数が確保できない
中長期的な事業プランも持たずに開設してしまった
まず、看護師数が常勤換算(うち一人常勤)で2.5人というルールが厳然とあります。
極論すれば、ステーションにセラピストが100人いようと、看護師が2人しかいないと、速やかに事業所をたたまなければならないのです。
平成27年度の厚生労働省のデータでは、看護師5人未満の事業所は全体の66%、つまり3件に2件の割合です。
背景として、全体的な看護師不足の上、緊急時対応など負担の大きさが定着率の低下につながっているといわれています。
また、理由2は、崇高な理念でステーションを立ち上げたものの、開設や運営に費やした資金が経営を圧迫するパターンです。
まさに「“理想”で腹は満たされない」の好例(?)といえます。
経営状態を瞬時に見極めるのは困難ですが、常勤看護職員5人前後で利用者数100 人前後の規模が、安定的な事業規模を確保できるひとつのメドとなっています(厚生労働省より)。
いかがでしたか?
この記事が訪問を検討している方の後押しになれれば嬉しい限りです。
二の足を踏んでいる方は、非常勤から始めてみるのはどうでしょうか。
訪問での業務内容や雰囲気、自分とのを理解してからでも良いと私は思います。
給料の良さだけで考えるのはおススメしませんが、訪問での経験が理学療法士としての大きなキャリアになることは間違いないと私は思います。
ご質問があれば、いつでもお受けします。
-
前の記事
あっちゃんの履歴書(後編) 2017.09.22
-
次の記事
元教員が語る、失敗しない国家試験の対策法。 2017.10.29
コメントを書く