【追記】医療従事者の行動指針

2020年も8月に突入──
全国の新規感染者数も1,500人を超え、新型コロナもすっかり「新型」感がなくなってしまうほど、毎日毎日毎日、耳のタコが破れて血が噴き出すほどに、そのワードを聞かされています。
新規の感染者も日付が変わるたびに最高値を更新し、誰が言うわけでもなく、再び外出を自粛し始めました。
そんな中──
やってしまったなぁ──って感じですね。
看護師が勤務していたのはNICU(新生児集中治療室)とGCU(新生児治療回復室)という部署で、入院中の新生児と他の職員からは陽性者は出なかったとのことです。ただし念のためNICUの新規入院を2週間程度停止するとの判断。
ダメージがそれだけで本っ当に、良かったです。
接触した赤ちゃんや職員にとっても、もちろん当の看護師にとっても。
上に掲載したメディアによる記事は、劇場のようなクラスター率の高い所に、1回どころか5回も行ったと言わんばかり(※個人の主観です)の論調に、引っかかるものを感じますし、ネットでも指摘されている通り、感染した看護師を特定できる情報を、記事にあげすぎだと思います。
ただし、
「看護師である以前に1人の人間なんだから、息抜きに観劇くらいいいだろ!」
「医療従事者は趣味も楽しむなと!?」
という意見には、残念ながら同調できません。
まず、看護師である以前に1人の人間なのではなく、1人の人間である以前に看護師なんです。
もちろん仕事とプライベートは切り離して考えるべきですが、それはプライベートで何をやってもいいということではありません。
理由は、今日制服を脱いでも、明日また制服を着るからです。
──ちゃんと説明しますね。
医療従事者は仕事が終わると、制服を脱ぎ、1人の人間に戻りますが、医療従事者であることの自覚は、いつも意識の根底にあります。
まあ医療従事者にかぎらず、これはプロと呼ばれる人に共通していると思いますが──
──まさにこれです。
リスク管理の話をすれば、必ず出てくるハインリッヒの法則ですが、下の図で特に意識するべきなのは、最下層にある不安定状態と不安全行動。

現場が『不安定状態』でないか、自分の行為が『不安定行動』に該当していないか、常に意識しておかないといけません。
プロとしては、たとえプライベートであっても、仕事上で発生する可能性があるリスクを、芽のうちに摘んでおく必要があります。
川崎市立病院の例で考えましょう。
NICUで入院しているのは、正常分娩を経ていない新生児ばかり。
なかでも早期に分娩した児が多いんです。
母胎で充分に発育しきれていない胎児というのは、抵抗力がものすごく低く、肺が未発達な場合が多いため、NICUは厳重に滅菌管理されているうえ、入院している新生児は保護器の中で人工呼吸器により生命維持が確保されています。
そんな中にウイルスを持ち込んだりしたら、どうなると思いますか?
まあ一般の方は知らなくて当たり前です。
でもそこで働くプロフェッショナル達は、知っていて当たり前のこと。
万が一、NICUでクラスターが発生し、中の患児が死亡したら、その両親は復讐の鬼と化し、病院とその看護師を徹底的に法廷で糾弾するでしょう。
私が冒頭で「本人にとっても良かった」と言ったのはそういうことです。
もちろん当の看護師は身にしみてわかっていると思います。
「医療従事者にも趣味を楽しむ権利くらいあるだろ」
もちろん従事者にも権利はあります。
しかし趣味とは多かれ少なかれお金を使いますよね。
そのお金はどこから出てくるんですか?
資格があり、働いて給料がもらえてこその趣味であることを、履き違えてはいけないんです。
現在治験中のワクチンが世の中に出回るまで、まだ時間が必要です。
世間は医療従事者に感謝していることは間違いない事実ですが、同時に医療のプロとして厳しい目を向けられていることも決して忘れてはならないと思います。
私もいつか、めいっぱい外で羽目を外せる日が来るのを夢に見ながら、今は自らを律して行動していきたいと思います──。
-
前の記事
京都の安楽死事件で積極的安楽死の議論は再燃するか? 2020.07.26
-
次の記事
福祉用具の正しい選び方。 2020.09.06
コメントを書く