【国試の戦術】Vol.1──巧妙なトラップ

200問からなる、PTOTの国家試験──
その内容は、1問ずつが5者択1~2の選択方式です。
そのほとんどが「正しい」か、「誤っている」かを選ぶというもの。
しかし、最近では必ずしも正しい、もしくは誤っていると限らないような問題が増えてきました。
例えば、下の問題。
脳卒中患者で内頸動脈系と比べて椎骨脳底動脈系の病変でみられやすいのはどれか。
- 失語症
- 認知症
- 同名半盲
- 半側無視
- 運動失調
第49回PT午前問題26
設問をみると、「みられやすいのはどれか」というもの。
ここでわれわれ解く側が留意すべきなのは、「みられるのはどれか」という問いかけではないという点。
理論的には5択のすべてが「みられるもの」かもしれず、解く側はそこから最も「みられやすい」ものを引き出さなければならないのです。
その上やっかいなのが、この5択の配置です。
ある程度勉強した学生なら、3の『同名半盲』をうっかり選び、さっさと次の問題に取りかかるかもしれません。
この問題の巧妙なトラップに陥ったとも気づかずに──
この問題の本当の正解は、5の『運動失調』なんです。
「えっ、なんで──!?」
──と思った方も多いのでは?
実は問題全体をみてみると、椎骨脳底動脈からくる病変は2.認知症、3.同名半盲、5.運動失調と3つあります。
このうち2と3は内頸動脈系の病変でも起こるんです。
それに対して小脳の栄養血管である前下小脳動脈と後下小脳動脈は、脳底動脈と椎骨動脈の影響をダイレクトに受けるため、この中では運動失調が最も起こりやすいという解釈です。
さらに巧妙なのは正解を5にもってきた点。
2と3が、5を覆い隠す、ダミーとなってしまうのです。
この序列が意図的だとすれば、出題者の並ならぬ執念を感じますね〜。
このトラップに引っかからない方法はひとつ。
必ず5択すべてに目を通すこと。
時間に限りもあるので、急ぐ気持ちも分かりますが、スピーディーな進行の中にも『慎重さ』を共存させるよう、心がけてください。
ではまた!
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