【臨床実習生が知って損をしない知識】レポート編

全国の学生諸君、ごきげんいかがですか?
セラピスト養成校の、特に最高学年の中には、新年度早々から実習施設への通学という方もいるのではないでしょうか。
当ブログでは実習生に向けた実習での心得を3回に分けて発信してきましたが、今回は最も悩みが多い『レポート』をテーマに述べていきましょう。
ダメ出しされる頻度を上げる事が『完成度の高い評価』への近道
学生さんの中には、自分は打たれ弱いからダメ出しされるのがイヤ、って言う人がいますか?
当然、論外です。
そんなのは「泳げるようになりたいけど水に濡れるのはイヤ」と言っているようなもの。
依然読んだ小説で主人公が「ダメ出しされていいものができるなら、その方がいい」なんて、いいことを言っていました。
まったくその通りで、どうせ通らなければいけないのであれば、アグレッシブに通らないと損です。
まず「やらされてる」感覚を捨ててしまいましょう。
「担当は決まっているけどレポート提出は先」という場合でも、時間に余裕があるからといって鼻をほじっている場合ではありません。
早いうちにデイリーノートで「プチ問題点の抽出」「プチ統合と解釈」を始めるのです。
そうしておくことで、レポート提出の頃には患者の障害像が掘り下げられているというわけです。
オッサンの昔話につきあってもらいましょうか。
私が学生だった頃は、個人レベルでパソコンを所有している人はいましたが、レポートは原稿用紙に手書きが最低条件でした。
ですから、自分が書いたデイリーノートの内容も文献の引用も、レポートとして書き起こすときは一からの手書きです。
昔と違ってレポート作成の際もデイリーノートの内容をコピペで流用出来ます。
本当に便利な時代になったものです(遠い目)。
統合と解釈を攻略しよう
私が教員だったころに、症例レポートの作成で最も多かった質問が、これです。
統合と解釈をうまく書けるようにするにはどうすればいいですか
——わかります。私も学生の頃は【統合と解釈】にずいぶんと悩まされたものです。
完徹したあげく、原稿用紙の半分すら書きだせなかったりもしました。
ですから書けない人の書けない理由もよくわかるつもりです。
そこで統合と解釈のちょっとしたコツを挙げていきたいと思います。
これを読むと、統合と解釈の意味が今よりも理解でき、障害像を系統だてて文章化できますよ。
統合と解釈って、「何を」統合して解釈するの?
他部門から収集した情報や理学療法検査で得られた多くの情報を統合させ、それが何を意味するものなのかを解釈する過程である
上の文章は統合と解釈を説明したものですが、これって「評価」とほぼ同義ですね。
唐突ですが、あなたは「検査測定」と「評価」の違いを説明できますか?
体重測定⇒72.8kg【検査測定】
体重測定⇒72.8kg⇒肥満【評価】
そして72.8kgが肥満だという意味づけを行うために、身長というデータを集め、BMIという『根拠』を用いて評価するわけです。
セラピストの治療プロセスにおける評価も、このやりかたとまったく同じなのです。
「解釈」するための根拠として、CE角や血液成分の正常範囲などの指標を用いたり、論文から材料を引っ張ってきたりするのです。
ですので、検査測定結果のよせ集めだけではただの数値の羅列であり、それ自体に何の意味もありません。
いきなり統合と解釈は書けないという方へ
自分は文章力ないんじゃないかと思っている方、ご安心ください。
ブログも一緒です。
ブログでも書き始めから自分の考えを一行目から読ませる文章を起こすなんてどだい無理な話で、まずは見出しを全体の骨格として立案していくわけです。
私の場合はまずこの儀式から始めないと、とりとめのない内容(儀式があってもとりとめがあるかは保証できませんが)になってしまいます。
でも見出し(骨格)をあらかじめ設定しておけば、結論というゴールを見据えてブレることなく論理を展開することができます。
統合と解釈が書けない、考えがまとまらないという方は、いったんその手を止めて、問題点の抽出から取りかかってみてはどうでしょうか。
問題点の抽出は、障害像の『骨格』である。
その名前のとおり問題点の抽出とは、余計なものを一切そぎ落として患者がかかえた問題を浮き彫りにしたものです。
これってブログでいう見出しと同じじゃないでしょうか。
下のフローチャートはトイレ動作困難の原因を段階的に表したものですが、下図の一番左が活動制限であり、そこから『何故できないのか』という自問自答を繰り返して問題点を素因数分解していき、一番右の心身機能レベルの問題に細分化するわけです。このレベル間の紐づけが問題点の抽出。
でも上図のフローチャートでは、項目間の繋がりが線で結び付けられているだけで、何故なのかまではわかりにくいですよね。
で、統合と解釈では、レベル間の紐づけが行われた『理由』を実際の動作観察や検査測定データを引き合いに出し、指標や文献の内容を根拠にして文章化(肉付け)するだけです。
この方法だと、問題点の抽出にはない問題が、統合と解釈では述べられているといった不整合は起きませんし、問題点の優先順位も浮き彫りにしやすいです。
動作実用性の表現について
補足ですが、諸動作の実用性の有無を表現するのによく使われる、「安定性」とか「安全性」などの各パラメータの意味について説明しましょう。
①機能性
動作の出来高の指標を指します。
ここでは完成度は問わず、その動作を遂行できるだけの身体能力を有しているかどうかが肝となります。
②安定性
出来高の確からしさと「再現性」のことをいいます。
その言葉ゆえに学生間で誤解されやすいパラメータです。
動作を行う際のバランス状態の表現として使われてしまいますが、まったくの誤りで、寝返り動作にも安定性はあります。
上にもでてきましたが、安定性とは再現性であり、簡単に言うと『10回行っても全く同じように遂行可能』であれば安定性は充分と判断するわけです。
③安楽性
機能のゆとり、予備能力を指します。
このパラメータは、動作の心身に対する負担度を意味します。
④速性
その名の通り、動作の遂行スピード、所要時間を表します。
⑤安全性
上の①~④に連動し、行為としての実践性や自己管理能力を指します。
まとめ
口を酸っぱくしていいますが、データの意味付けには必ず指標や根拠が必要です。「何となくそう思った」ことを理由や根拠にしている学生も見かけますが、そういうのをただ単に「独りよがり」というのです。対象者にとってはたまったものではないですので、注意してください。
❶早いうちからデイリーノートでスーパーバイザーとのキャッチボールを始めておく。
❷集めたデータの意味づけには【根拠】が必ず必要。
❸統合と解釈という【肉付け】の前に、問題点の抽出という【骨格部分】を組み立てることが先決‼︎
あとはHopeやDemand(主観的希望)に惑わされず、Needs(客観的希望)に基づいて解釈を行うことも重要です。
頑張ってください。
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