後悔しない理学療法士・作業療法士養成校の選び方。
- 2022.02.17
- 一般の方向け 学生向け 教養・その他
- 作業療法士, 医療従事者, 合格率, 国家試験, 大学, 専門学校, 就職率, 後悔しない, 理学療法士, 選び方, 養成校, 3年制, 4年制

今から30年以上前──。
まだ筆者がうら若き高校3年生だった時分は、地元の大阪に理学療法士養成校はたった4校、全国でも60校足らずしかありませんでした。
それがいま現在では全国で263校(現在募集している養成校のみ)あるようです。
どの養成校にすればいいのか考えている人は、悩ましいところでしょう。
ですが授業料の安さや耳障りのいいキャッチフレーズで簡単に選んでしまうと、3〜4年後には深刻な後悔を味わうことになります。
そこで、元教員の私が間違いのない学校選びを、あなたに伝授したいと思います。
学校レビューは信用できるか?

よくSNSやネット掲示板で、セラピストの養成校の学生が自分が在籍する学校についての批評を見かけます。
読むと、教員の不倫の話や、授業で教員からパワハラを受けたとか、はたまた不当に留年を宣告させられたとか。。。
読んでいるうちに、この学校大丈夫!?と不安になりますよね。
しかしこういったネットに落ちている悪口の類は、便所のラクガキ程度に考えてさしつかえありません。
教員から自分の意に染まないことを言われたり指示されたり、試験でテストの点数が足りないからと単位がもらえなかったりなどなど──。
その学生がいうように、学校の落ち度もあるのかもしれませんが、そんなことで夜な夜なネットに不平不満を書き込んでいる学生の方にも問題があることが多いと思われます。
特に攻撃的な表現を用いたレビューほど、読む価値は低いと考えていいと思います。
いいですか?
この機会に、医療系養成校とはなにかを、正しく認識するようにしましょう。
養成校とは、お金を払っている学生はお客様で、手取り足取りのサービスを受けに行く場所ではありません。
養成校とは、お金を払って必要なカリキュラムを修了して、国家試験をパスして無事に資格を取得するところなのです。
そういう意味では自動車教習所と同じです。
あなたが自動車教習所で仮免許試験や卒業試験がクリアできなかったとして、教習所や教官に対する恨みつらみをネットの掲示板に書きつらねますか?
まっとうな学生なら、なんらかの不満を学校に抱いていたとしても、学校は資格を取るための『手段』と割り切って、次回にクリアできるための対策を練るでしょう。
私にいわせれば、勉強もせずに便所のラクガキを書くことに執念を燃やしている側の人にこそ、医療従事者としての適性を疑った方がいいんじゃないでしょうか。
ネットでの書き込みは、話半分くらいに受け止めた方がよい。
養成校のホームページは役に立つか?
各校の説明について

養成校のHPを拝見しましたが、どこも似たり寄ったりな感じですね。
個人的にはキャッチフレーズと称した「無内容なポエム」が鼻についてうんざりします。
理学療法士とは何か、といったことにかなりのページを割いている学校もありますが、そんなものは理学療法士のサイトでも見ておけば事足ります。
公益社団法人 日本理学療法士協会
『学校や学科の特徴』で書かれている『○○型学習、○○型教育の導入』も、あまり意味があるとは思えませんね。
ひとつの型で学生に教育方法を当てはめようとしても、うまくいくはずがないからです。
あと、けっこう笑ってしまったのが、『○○年度 △△賞受賞!!』とかいうドヤり文句。
そんなもん、在学の学生に何の関係もありませんよ笑。
売り場のワインに貼られている『モンド賞受賞』のシールていどの価値しかありません。
養成校の就職状況について

当校は就職率100%です!
と聞けば──
おおっ、この学校に入ると就職は間違いないのか…。
多くの方はきっとそう思うに違いありません。
──でもちょっと待ってください。
それは、卒業試験も国家試験も合格した学生に限った話で、「入学生」が100%就職できるわけではありません。
分母を入学生にすれば、どの学校もかなりパーセンテージが下がるはずですが、その数値を出している学校は「1校も」ありません。
大多数の学校のホームページでこの『就職率100%』を売りにしていますが、ちゃんちゃらおかしいですよ。
大多数の学校がうたい文句にしていること自体、要するに『フツー』のことだと気づきましょう。
現在でもまだ医療現場からの理学療法士の需要は低くないわけですから、ドヤ顔で誇ることでもないわけです。
筆者が有用と思う情報

ここまで養成校のホームページをほとんどこき下ろしてきましたが、収集すべき情報はあります。
それを以下に記します。
❶ 所在地・交通アクセス
❷ 全カリキュラムの期間
❸ 夜間部の有無(志望の方のみ)
❹ 学費・諸費用
❺ 募集要項・入試日程
❹についてですが、大事なのが諸費用です。
教科書代やら白衣などのユニフォーム代の他、実習施設が遠隔の場合は新幹線や飛行機の交通費や宿泊費などは自腹の場合があるため要注意です。
そもそも医学書は、一冊当たりの値段が結構高いので、注意してくださいね。
諸費用についてHPに明記していない場合は、直接学校に問い合わせた方がよい
あと、お得な就学期間や授業料で、PTとSTが取得できるなどの『Wライセンス取得優遇制度』のような情報は、検討すべき情報だと思いました。
3年制専門学校か4年制大学か?
専門学校、大学のメリット

各校のHPを閲覧していると、三年制のところは三年制の方が、四年制のところは四年制が有利だと主張していますが、はたしてどちらが有利なのでしょうか。
考え付く限りのメリットを上げてみました。
【3年制学校のメリット】
- トータルの学費が安い
- 最短時間でライセンスが取れる
【4年制大学のメリット】
- 在学が1年多いぶん、勉学にゆとりができる
- サークルや学校設備が充実している
- 学歴面で就職に有利に働く場合もある
- 高度専門士の称号が取得できる
ちなみに高度専門士とは何でしょうか。
「高度専門士」の称号が付与された者は,大学卒業者と同等以上の学力があると認められる者として,大学院の入学資格が与えられる。
文部科学省HPより引用
大学でない4年制専門学校でも、高度専門士が取得できるとは限りませんので、文科省サイトであらかじめ調べておきましょう。
三年制夜間部について

三年制夜間部に興味を持たれる社会人の方は多いんじゃないでしょうか。
何せ最短の三年で、仕事との両立を図りながら通学できるこのコースは、一考の価値があると私も思います。
ただある程度の認識と覚悟が必要です。
その1、カリキュラムはかなりタイト。

昼間・夜間にかかわらず、監督省庁から定められている最低習得単位数は、75単位。
当然カリキュラムに差はありません。
そして授業はひとコマ90分も、昼夜ともに同じです。
しかし昼間部の学生は、朝から夕方までを消化できるため、1日あたり【4コマ】の講義が実施できるのに対し、夜間部はせいぜい【3コマ】が限界なわけで、物理的に余裕がありません。
その2、仕事との両立はかなりシビア

1年生の最初から、解剖学、生理学などの基礎科目が始まり、そのあと運動学、精神医学、評価学、治療学。。。
覚える内容量がかなり膨大です。
そしてそれら全てに試験があり、中には実技での試験というものも存在します。
自分は授業で全部覚えるからヘーキヘーキ!
──と思ってるあなた。
おカネと時間がもったいないから、養成校に行くのはやめておきなさい。
そんなお花畑な脳ミソにやすやすと詰め込めるような、知識の量と内容ではないんです。
昼間部の学生は、放課後に学校で頑張って復習していますが、夜間部の場合は恐らく何かを犠牲にして独習の時間を捻出しなければなりません。
ここの見通しが甘いと、最悪の場合は単位取得ができず、留年の憂き目をみることになり、経済的にも人生設計的にもかなり苦しくなるという、皮肉な結果となりますので注意してください。
その3、実習は昼間に行かなければならない

基本の座学は夜間ですが、医科大学での解剖実習をはじめ、臨床実習は昼間が前提ですので、その日程は勤務できない旨を職場に説明したうえで了解をえる必要があります。
最終学年では、かなり長期の実習になるうえ、それが終われば国家試験対策一色になりますので、できれば2年生で退職できるように、あらかじめの資金計画を立てておいてください。
結構大変さばかりを強調してしまいましたが、時間的にも経済的にもしっかりと計画が立てられて、体力に自信もあり、最短で資格がほしい人には、この三年制夜間部はおススメできます。
3年制 vs 4年制、軍配はどちらに?

学校を資格を取るためのツールと割り切り、効率よく理学療法士になりたいなら3年制。
キャンパスライフを楽しみながらじっくりと資格を取るための準備をしたい、また卒業後に大学院に進んで修士や博士を取りたいなら4年制。
──つまり、3年制にしても4年制にしても人によって適不適があるので、すべての人にこちらが良いと断じることができないのです。
ただ、すべての人に即答できるのは、国家試験の合格率が低い学校は、絶対に選んではいけないということです。
それを次項で述べていきましょう。
国家試験合格率の信ぴょう性
国試合格しなければ、ただの人。

セラピスト養成校に入学する目的ってなんですか?
──医学的知識を得るため?
──単位をとって進級するため?
──臨床実習に合格するため?
どれも違いますよね?
どれだけ他のことを犠牲にして勉強しても、最後の最後で国家試験に落ちれば、それまでの時間とお金と努力は全部パー。
水の泡です。
そう、養成校に入る目的はひとつ。
国家試験に受かり理学療法士になるためです。
しかし養成校のホームページすべてには、必ずしも合格率が掲載されているわけではありません。
──が、ご安心を。
実は学校ごとの合格率を閲覧できるページがあるんです!!
興味がある方(ない方は皆無だと思いますが)は、ぜひ下のリンクから確認してください。
看護医療進学ネット
学校別合格率一覧表のみかた

大項目として総数・新卒・既卒とありますが、それぞれに合格者数の項があるでしょう。
いうまでもなくこれがその年度の合格率で、新卒(在校生)と既卒(卒業生)を会わせた合格率が、『総数』になるわけです。
一見、合格率が高いほど成績としては良いように思われがちですが、ここに数字のカラクリがあります。
ここで元教員の私が、そのカラクリについて説明していきましょう。
出願者数と受験者数との差

まず、出願者数と受験者数に差があることに気がつきましたか?
学校によっては10人以上も受験者数が少ないところがあります。
──なぜこうなるのか?
その前に合格率について説明しましょう。
『出願者数』とは、定められた期日までに願書を提出し、受験票が発行された人数をいいます。
『受験者数』とは、国家試験当日に会場で受験した人数をいいます。
合格率とは、合格者数を出願者数ではなく『受験者数』で割ったものなんです。
多くの学校では、願書出願から国家試験当日までの間に卒業試験なるものがあるのですが、そこで及第に達しないものは卒業の資格を与えないわけです。
すなわちその年度の卒業見込みが消滅してしまうため、国家試験を受ける権利も同時になくなってしまいます。
学校にしてみれば、ぶっちゃけ合格の見込みがない学生が国家試験を受けて合格率を下げられたくない、というのが本音ですからね。
こうして受験者数が出願者数を下回るという状況が発生するのです。
確かに卒業試験程度で及第点をとれないのに、国家試験が受かるはずがないという考えはあながち間違えてはいませんけどね。
出願者数と受験者数の差は、国家試験合格率を下げないための、学校側の『損切』だと捉えておく。
学校の定員と出願者数との差

各校のHPの募集要項には、『定員数』が明記されています。
理論的には、定員数と国家試験出願者数は等しいはずですが、一覧を見てみると、結構な差があるケースがあります。
これは、入学生の学力が比較的低い学校で起こりやすい現象です。
とりあえず入学したものの、あまりの勉強の過酷さにキャパオーバーとなり、そもそもそこまで強く理学療法士になりたかったわけではない、というわけです。
まあ、あなたの理学療法士になりたい気持ちに揺るぎがないのであれば、周りの学業がどうであれ、あなたの学業には何の影響もありませんけどね。
異様に多い既卒者数

表の右側の既卒者数にも注目しましょう。
5校にひとつくらいは、際立って既卒者の数が多い学校がありませんか。
既卒者とは、養成校を卒業したにもかかわらず、国家試験に合格できていない、つまり「国試浪人生」です。
つまりバッサリいえば、その学校が過去に出してきた『不合格者数』を表しています。
さらに、2020年度の国家試験での既卒者の全国合格率は23.9%と低く、いったん落ちぐせがついてしまうとなかなか合格できない現状を差し引いても、学校が既卒者へのフォローが行き届いておらず、毎年雪だるま式に増えていることが考えられます。
総評

ここまでで気になるのが、理学療法士国家試験の難易度だと思いますが、毎年変動はありますが、おおむね全国平均は85%前後で推移しています。

全国平均は以上ですが、大事なのは各校の合格率。
75%のところは4人に1人が、50%のところは2人に1人が、お金と時間と努力を費やした挙句、理学療法士になれなかったことを意味します。
たまたま今年だけなのかどうかまではわかりませんが、その学校の学生に、合格する力が不足していたことは間違いないでしょう。
あと、大学と専門どちらが合格率が高いのかを訊かれることが多いですが、一概にはいえない、としかお答えできません。
実際に大学であるにもかかわらず、合格率が70%に届かないようなところもありますので。
大学にせよ専門学校にせよ、セラピスト養成校にも「Fラン」は存在するわけですよ。
ともあれ、自分の勝手な価値基準で、あやまった判断をしないように、正しい情報を得るためのアンテナは広げておきたいものです。
最後に

ネットというものは本当に便利なものです。
学校のホームページを見るだけで、さまざまな情報が手に入るだけでなく、資料の請求までできるんですから。
でもすべての情報が事実というわけでは決してありません。
私自身もこの記事を書くにあたって、たくさんの養成校のサイトを閲覧しましたが、その中に「ホンマかいな。。」というのも発見しました。
誤解がないようにいっておきますが、養成校がウソをついているわけではありません。
ですが、学校が真実をすべて開示しているわけではないということは、念頭に置いておきましょう。
どの学校にするか最終決定する前に、絶対にやっておかなければいけないこと。
それは自分の足で現地へ赴き、その場の雰囲気、学生の活気、先生のやる気や生徒との関係などを肌で感じてくることです。
あとで絶対に泣きをみないように、あらゆる手を尽くしておきましょう。
それでは!
-
前の記事
【受験生に告ぐ!】コロナ陽性で国家試験をフイにしないためには── 2022.02.02
-
次の記事
新人のセラピストに告げたいこと。 2022.04.19
コメントを書く