新人のセラピストに告げたいこと。

新人のセラピストに告げたいこと。

4月になり、新しい年度が始まりました。

新人セラピストのみなさんは、今頃は新しい職場で、業務の流れと人の名前を覚えるのに脳細胞をフル活動させていることでしょう。

国家試験もパスし、各々が明るい未来像に胸ふくらませて第一歩を踏み出すまえに、この業界の先達として、みなさんに伝えたいことがあります。

これはあなたたちのセラピストとしての将来にかかわることですので、ぜひ読んでほしいと思います。


概論で習った療法プロセスを大事にしよう──。

理学療法(作業療法)プロセスという言葉、憶えていますか?

──そう、あなたが養成校1年時に勉強したアレです。

実習でもこのプロセスにのっとり、患者さんの障害像を評価するようにスーパーバイザーから指導されたことでしょう。

残念ながら、今年卒業の方は、コロナで一部の実習が免除となったため、プロセスの最後までを行うことができなかったかもしれません。

評価プロセス
セラピストの治療プロセス

セラピストが患者さんの機能回復を図るうえでのもっとも重要な考え方なんですが、なぜ私がこのプロセスを重要視するよう、ことさらに言うのかといえば、あなたの職場がヌルければヌルいほど、このプロセスがなおざりになる傾向にあるからです。

そのうちあなたもその空気感に染まっていき、気がつけば立派なダメセラピストの出来上がりです。

ダメセラピストのプロセス

ダメセラピストの特徴として、まともに動作分析や情報収集は行われず、評価や判断は短絡かつ直感的で、治療も場当たり的で的外れなものが多く、その方法のほとんどが治療ベッドやプラットホームでの徒手療法(というよりマッサージ)がほとんどです。

ダメセラピストが治療をする患者は、慰安的なマッサージを求める傾向が強く、場当たり的かつ的外れな治療しかしないためほとんど変化はなく、半年たっても一年たっても顔ぶれは変わりません。

にわかには信じられないかもしれませんが、そのような現場は老人保健施設や通所リハでは珍しくないというのが私の見解です。


1つの手技の前にガイドラインに則ったリハビリテーションを学べ!

医療行為の法とも言える「ガイドライン」

Twitterでは常日頃から問題提起されているのがセラピストの怪しげな「施術」。

これはあるリハドクターのツイートの抜粋です──

医者は疾患に関して『ガイドライン』を通して治療しなければいけなくて、ガイドラインを外して治療し、問題が起これば責任問題になるが、リハ職って怪しげな施術をしてもお咎めなしと言うのは腑に落ちない。少なからずまずは共通の『標準施術』をしてほしい。なんちゃってゴッドハンドはいらない。

りはどくたーKK@意識低い系リハ医のTwitter

実は私はこの「施術」という言葉が個人的に大嫌いなんですが、それはまあ置いておきましょう。

ドクターや看護師をはじめとする医療従事者には、状態や検査結果からの診断、症状の改善、重篤化や合併症の予防のために投薬や処置・手術などの「治療ガイドライン」が厳然として存在し、そこから逸脱することは基本的にはありえません。

医療従事者はこの「ガイドライン」に則って、患者への介入を行っているんです。

いわゆる「名医」というのは、凡庸なドクターがスルーしてしまいがちな状態や変化を決して見逃さなかったり、リスクが高すぎるため誰も手を出したがらない手術を成功させてしまうようなドクターに与えられる称号ですが、その名医ですら日々「ガイドライン」通りの診断・治療を行っています。

なぜリハ業界では「ガイドライン」が徹底されないのか

この「ガイドライン」が、医療では法のように働くのが通常であるべきなのに、なぜリハビリテーション業界に限ってはそれを無視することがまかり通るのでしょうか──。

私が思うに、「〇〇法」とか「〇〇テクニック」などといった特化した手法が、黎明期のリハ業界からすでにひとつのステータスとして既得権を確立していたこととまったく無関係ではないでしょう。

それらの手法にはそれぞれの中で確立したプロセスがありましたが、それ以外のグループとは共有しないばかりか、ひどい場合はグループ間でお互いを否定しあう始末でした。

そうやってグループが正当性を主張することにうつつを抜かしているうちに年月だけがたち、リハ業界の「ガイドライン」が曖昧模糊としたまま、現在に至ってしまったんです。

この「ガイドライン」が一本化しない状況が、モミモミ&お散歩(自称歩行訓練)といった、いわゆる「なんちゃってリハビリ」が蔓延る土壌となったのではないかというのが、私の考えです。

かくして、「なんちゃってリハビリ」が周囲からの白い視線を集めながらも淘汰はされず、一定数の勢力を誇るようになってしまったのです──。

新人セラピストが最初に目指すべきもの

新人セラピストであるあなたには、今は何もありません。

でもだからといって、特定のテクニックに盲目的に手を出すのは尚早です。

まずは患者の障害像を正確に把握するためのプロセスを実践し、問題点を解決するための手段として「ガイドライン」を実践することに傾注するべきです。

その実践のための手法のひとつとして必要なのであれば、どうぞ特定のテクニックを引き出しのひとつとして身に着けてください。

ただしどのテクニックも万能な魔法の杖ではないということを忘れないように。

自分の視野を狭めないためにも、複数のテクニックに興味を持つように心がけてください。


コミュニケーションスキルの向上は喫緊の課題である。

患者が待ち望んでいるのは、自分に寄り添ってくれ、心が温かく、しかも凄腕のセラピストです。

そのために必要なものは何でしょうか──。

それがすべてではありませんが、優先順位が高いものにコミュニケーションスキルがあります。

言葉というのは非常に強力です。

正しく使えば、魔法のように相手をふるい立たせることもできますが、ひとつ間違えば、奈落の底に叩き落すこともできます。

私はこれまでに、コミュニケーションについていくつも記事を書いてきましたが、それだけ重要なものだと思っています。

コミュニケーションスキルについての記事一覧

私は、どれほどすごいテクニックを持っていたとしても、正しい意思疎通を理解していなければ、せっかくの腕も意味を失ってしまうと考えます。

たかが言葉、と侮ってはいけませんよ。

とはいえ、コミュニケーションはうまくても、機能を改善するための引き出しを持ち合わせていないセラピストとの出会いは、これまた患者にとっての不幸なんですが──。


最後に──

もっと端的にまとめるつもりでしたが、けっこう長々と述べてしまいました。

ですが、資格を取得したことにあぐらをかき、安穏とした毎日を過ごしていると、あっという間に1年たち、2年たち、気が付けば10年選手なんてことになってしまいます。

そうなってから何もないダメセラピストだと気づいてからでは、なかなか挽回が難しい。

新人と呼ばれているうちに、自分が進むべき道を、今から見定めておきましょう。

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