臨床実習生自死事件からパワハラについて考える

臨床実習生自死事件からパワハラについて考える

以前にもブログで挙げていました、大野裁判。

2018年8月に一審で勝訴判決後、2019年4月に大阪高裁にて和解が成立しました。

ご遺族にとっては、足かけ5年半にわたる戦いに、ひと区切りがついたわけです。

──本当にお疲れ様でした。

そして亡大野輝民君のご冥福を、あらためてお祈りします。

──しかし、これで終わりにしてはいけません。

当事者である近畿リハビリテーション学院はもちろんのことですが、その他の養成校や指導にたずさわるセラピスト全員が、この事件を対岸の火事として認識していては、第2、第3の大野君が出てきてしまうのです。

ほとんどのパワハラの加害者は、自分がパワハラをしている自覚がありません。

むしろ学生の成長を願い、熱心に指導しているくらいに思っているかもしれません。

しかし学生が指導者の思いに共感していなければ、それはパワハラに過ぎません。

そして今回の事件のようにパワハラが人を死に追いやる可能性があることを、我々はもっと銘記すべきなのです。

まずは自分がパワハラを行っているのか否かを自覚するために、パワハラについてよく知っておく必要があると思います。


パワハラとは?

パワハラの定義

パワハラとは、 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。

厚生労働省資料より引用

というように、職場環境でのパワハラを前提としていますが、「職場」「実習」に置き換えても問題ないと思います。

『優位性』ついても様々な優位性が含まれるとされており、実習指導者と学生との関係も、指導者側に大きな優位性があるといっていいでしょう。

パワハラの類型

厚生労働省によると、パワハラには6つの類型があるとされています。

❶身体的な攻撃

たたく、殴る、蹴るなどの暴行を指します。

ないない!」と思っている方、丸めたレポートなどではたく行為もこれに該当しますのでご注意を。

❷精神的な攻撃

脅迫、名誉毀損、侮辱、暴言などの『言葉の暴力』を指します。

マジでお前には理学療法士になってほしくないわ」といった相手を否定する発言はアウトですし、「もう実習やめとくか?」というのも脅迫ともとれる発言ですね。

❸人間関係からの切り離し

いわゆる『村八分』です。

隔離や仲間外し、無視などが該当します。

幼稚で陰険な嫌がらせですが、学生から聞く話では、実習では意外とよく行われているようです。

❹過大な要求

学生の能力を超えた課題を指示したり、具体的な指導もなく改善を要求したりがほとんどのケースです。

課題をやってこない限り患者は診せられない、という『精神的攻撃』が合わせ技になることが度々あるようです。

❺過小な要求

合理性がなく、本来の実習の目的とはかけ離れた質量ともに低い作業を命じたり、まったく何もさせないことです。

実際にはレポート課題が期日に間に合わなかった学生を、一日中、壁に向かって立たせていたという酷い話をきいたことがあります。

❻個の侵害

プライバシーに過度に立ち入る行為です。

過去の経歴や個人情報に関することを訊いてくるのはその代表例です。スマホを学生の許可なく閲覧したり、学生の交際相手について根掘り葉掘り探るのもやめた方がいいでしょうね。

パワハラに対する法的な罰則

大野裁判の一審判決で命じられたのは、6,100万円の損害賠償。

最終的には3,000万円で和解しました。

しかしそれで故人が帰ってくるわけではなく、当事者には深刻な後悔が残るのみです。

民事においての責任

民事裁判では民法に照らし合わせて、

  • 不法行為責任(行為者)
  • 安全配慮義務(会社・使用者)
  • 違反使用者責任(会社・使用者)

の有無が問われます。

裁判によって上記の責任が認められることで、多額の損害賠償が請求されることになります。

不法行為とは、『ある者が他人の権利ないし利益を違法に侵害する行為』を指します。

大野裁判では、主に安全配慮義務違反が問われていました。

刑事罰

  • 名誉棄損
  • 侮辱罪
  • 脅迫罪
  • 暴行罪
  • 傷害罪

が適用される可能性があり、罰金刑や懲役だけでなく、減給や降格、最悪の場合は、職や社会的な地位を失って家庭崩壊の憂き目にあうかもしれないのです。


まとめ

全体的に、実習指導者へのメッセージになりましたが、学生へのパワハラへの対処法も、後日記事にしたいと思います。

実習指導者側に求められる姿勢

  • 実習指導者である自分は、学生からすれば圧倒的優位な立場であることを自覚する
  • 学生とはこうある「べき」という自分ルールを捨てる
  • 学生が意味の解らない行動をとった場合は、短絡的に「やる気がない」「なめている」と決めつけず、なぜそうしたのかその傾聴する
  • 実習中断などの、実習の合否に関わるような話を学生と直接せず、まずは学校と相談し、最終的な判断も学校側にゆだねる
  • 足りない部分の指摘のみに終始せず、わずかでも変化できた部分を認め、褒めるようにする
  • 他の学生と比較しない
  • 過去の自分とも比較しない
  • 同僚がパワハラをしていても無関心を決め込まず、パワハラにあたることを指摘してあげる

以上は教員としての経験によるものですが、この心がけによって学生とも自分の感情とも適切な距離を置くことができ、冷静な指導ができるのではないでしょうか。

繰り返しですが、今回の裁判から、また昨今のパワハラ騒ぎから、パワハラを行うことで誰一人として幸福になることはないとわかるはずです。

指導者には指導者なりの苦悩があると思いますが、これからも頑張ってください!!

こちらの記事も、ぜひお読みください!

実習生指導を今こそ考えよう①

ライブリーな人生を。

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