【辛口注意】セラピストのこれから

【辛口注意】セラピストのこれから

新年度の始まりになると、毎朝の通勤電車の顔触れに初々しさが混じります。

彼らの様子を擬音語にすると、ドキドキ、ワクワク、ソワソワといったところでしょうか。

これから待ち受けている長い長い未来の前に呆然と立ち尽くしていながらも、皆バイタリティに満ちあふれたいい面構えをしている。

私はそういう彼らをウォッチングできるこの時節が大好きです。

 

オッサンキモ

 

2018年度介護保険改定からみた、いちセラピストが抱いた危機感。

今年は医療・介護のダブルで保険制度の改定がありました。

私は訪問看護ステーション所属のセラピストなので、訪問看護関連で話を進めていきたいと思います。

 

今回の改定で明らかに変わったのは2つ。

セラピストによる訪問看護サービスの報酬減算

訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問の見直し

他にも変更点はもろもろありますが、今回はこの2つに絞っていきましょう。

 

セラピストが行う訪問看護サービスの減算

平成27年度改定に引き続き、今回の改定でもセラピストが行うサービス報酬の単位数が減らされました。

しかも要介護で6単位、要支援にいたっては16単位の減算です。

今回の改定で訪問看護関連で厳格化されたのは、セラピスト報酬の他は複数名訪問看護加算くらいではないでしょうか。

それ以外の看護職員の報酬は微増、容体急変時に駆けつける、緊急時加算に至っては大幅増となっていて、終末期の看取り体制を在宅へシフトしようという国の強い意向がかいま見らことができます。

私が現在働いているステーションは訪問件数に応じてインセンティブ制度を設けていますが、今回の改定を受けて、訪問一軒あたりの手当てを減額する措置をとりました。

要するにセラピストの給与削減ですね。

 

いったいなぜ国は、訪問看護全般には背中を押しながらも、リハビリに対してはブレーキをかけようとするのでしょうか?

今までにも過程の議論がなかったわけではなく、訪問看護の事業内容において問題が提起されてきていたのです。

 

看護師が介入せず、セラピストのみで訪問を行なっている割合の高さ【30%】

セラピストのみで訪問を行なっている要支援(介護予防)の割合の高さ【20%】

セラピストのみで訪問を行なっている利用者に対する看護師との連携割合の低さ【22%】

 

上の数値をどう評価するかは人それぞれですが、セラピストのみの訪問で収益をあげている事業所を、国は【歪(いびつ)】であると考えているようです。空気読めよと。

 

では訪問看護のリハと業務内容的にカブってきた、病院や診療所からの訪問リハはどうなんでしょう?

基本報酬は減少ですが、リハビリテーションマネジメント加算の見直しにより、実質は増収となります。

 

このことから、今後は訪問看護から訪問リハに、在宅でのリハビリに軸足をおきつつあるのでは、という危惧を禁じ得ません。

この私の考えには根拠があります。

現に大阪市は3年前から以下のように唱えているのです。

理学療法士等の訪問が、保健師又は看護師による訪問の回数を上回るような設定は、リハビリテーションのニーズを有する利用者に対し、病院、介護老人保健施設等が地域に存在しないこと等により訪問リハビリテーションを適切に提供できず、その代替えとしての訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問が過半を占めるような場合であること。(大阪市内の場合、訪問リハビリテーションの事業所が存在するため、リハビリテーションのみが必要な利用者は原則として訪問リハビリテーションを利用すること。

平成27年度 大阪市介護事業者等集団指導資料より引用

つまり大阪市は、「セラピストのみの訪問件数が看護師のそれを上回るような訪看ステーションは、よもやあるまいな?」と言っているんです。大阪市は病院・診療所・老健が充実しているんだから、それらの施設が行う訪問リハビリが在宅における機能回復を行えばよい、と。

要するに、国や自治体が訪看ステーションに期待しているのは【看護】であり、【リハビリ】ではないのです。

そこで私の脳裏に浮かぶ疑問はただひとつです。

セラピスト主体でここまで拡大を重ねてきた訪看ステーションは今、息をしてるんだろうか』と。

 

これまでの流れから、3年後の改定で訪問看護リハ報酬の大幅な増収は完全に幻想となってしまった今となっては、所属するセラピストはそれを承知で今まで通り粛々と働き続けるか、近未来に目標を据えて準備を始めるかの決断を迫られているんです。

どうしても訪問をやりたいのであれば、病院・診療所付きの訪問リハの方が先行きは明るいかもしれません。

 

訪問看護ステーションでのセラピストの存在意義とは?

私が前述の減算以上に失望したのは、もうひとつの『訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問の見直し』の方なのです。

【見直し】の詳細は以下の通り。

セラピストが訪問看護を提供している利用者については、利用者の状況や実施した看護(看護業務の一環としてのリハビリテーションを含む)の情報を看護職員と理学療法士等が共有するとともに、訪問看護計画書及び訪問看護報告書について、看護職員と理学療法士等が連携し作成することとする。

訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成にあたり、訪問看護サービスの利用開始時や利用者の状態の変化等に合わせた定期的な看護職員による訪問により、利用者の状態について適切に評価を行うとともに、セラピストによる訪問看護はその訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりにさせる訪問であること等を利用者等に説明し、同意を得ることとする。

 

私はセラピストのみの訪問に、経験上不安を感じていましたから、「定期的な看護職員による訪問」は歓迎すべきものとしてとらえています。

しかし、「看護職員の代わりにさせる訪問であること等を利用者等に説明し、同意を得ること」は必要でしょうか。

しかも疑義解釈(Q&A)をみてみると、改定前からの利用者に対してもあらためて同意が必要であり、様式がないので方法は問わないが、口頭の場合は同意を得た旨を記録等に残す必要がある、というのです。

方法を問わないってことは、メモ書きを記録用紙に貼り付けておいても差し支えないってことですよね?

 

ぶっちゃけそれって【嫌がらせ】じゃないですか?

 

利用者にとってそれは意味のある、必要な事なんでしょうか?

「代わり」というのなら、看護職員はセラピストと同等のアセスメントやプランニングができるんでしょうか?

 

誤解がないように。

私が言っているのは、優劣ではなく専門性の問題についてなんです。

これでは現場のセラピストの士気は下がる一方ですよ。

 

おわりに

平成27年9月の介護給付費分科会で日本理学療法士協会会長が、

「通所介護(デイサービス)で最近、『リハビリテーション特化型』という言い方がかなり頻繁に使われるようになった。リハビリテーションという言葉は、あくまでも医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のチームがあるということを前提として言葉の使い方を整理した方がいいのではないか」

と問題提起しました。

いやそこも大事なんでしょうよ。

でも言葉の使い方の整理なんかよりも在宅現場で働くセラピストの収入や矜持を守る方が、協会として着手すべき重要事項じゃないんですか。

 

——と、毒を吐き散らしてしまいましたが。。。

本記事をご覧になったセラピストのうち、訪問を考えている方は不安になったかもしれませんね。

でも「訪問を検討しているセラピスト、必見」でも述べたように、特に若い人には訪問に飛び込んできてほしいです。

ただ、長い目で見れば、訪問看護よりは訪問リハの方が存分にセラピストとしての能力を発揮できるのではないかと私は思います。

在宅でのセラピストに対するニーズはまだまだ高いですよ。

 

次回は『2025年問題とセラピストのこれから』について述べたいと思います。

ではでは。

 

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう