【リスクマネジメント】負うべき責任と事故の法則
- 2018.06.10
- セラピスト向け 教養・その他
- ハインリッヒの法則, ヒヤリハット, リスクマネジメント, 不安全行動, 不安定状態, 事故, 刑事責任, 報告書, 民事責任, 行政責任, 説明責任, 5W1H

リスクマネジメントも第三弾となりました。
これまではどうすればリスク回避できるのかを述べてきました。
今回はまず、事故が起こってしまった場合に負うべき責任についてから始めたいと思います。
事故と責任
万が一、事故が起こってしまった場合、何種類かの責任の取り方がありますが、以下の一部およびすべての責任を負うこととなります。
刑事責任
その人の行為が社会的避難に値する場合に、国は刑罰権を行使し、その行為を処罰することです。
すべては刑法に照らし合わせて裁かれることになります。
私は理学療法士ですが、この仕事でのの過失【ミス】で当てはめられることが多い刑事罰は、業務上過失致死傷だと思っていました。
なんといっても危険だらけのリハビリの現場。少しの油断で患者を転倒させてしまうような現場ですからね。
で、厚生労働省のサイトに医道審議会というのがあるので調べてみると──
道路交通法違反、住居侵入、窃盗、詐欺、強制わいせつ、児童買春、強姦致傷、放火、覚醒剤取締法違。。。
。。。。。。
。。。。。。
──ああそっちね。
てっきり業務上での失敗と思っていましたが、斜め上に踏み外された場合なわけですかそうですか──
そのうち殺人で逮捕されるセラピストが出てくるんだろうなと思いながらググってみたら、もう既にありました。。。
セラピストの増加に従ってこういう事例はどんどん出てくるんでしょうね。。。
民事責任
加害者が被害者の権利または利益を侵した(不法行為責任)場合を意味する。
刑事責任との違いは、加害者が【社会】に対する責任を問われるものに対して、民事責任は、【被害者】に対する責任を問われるものです。
行政責任
行政は、免許を受けている従事者に不適切な事情が生じた時、行政は免許を取り消したり、業務を停止させたりするなど、行政上の処分を下すことができます。
以前では刑事罰が科せられた場合だけが行政処分の対象になっていましたが、マスコミによる行政の監督責任を問われたり、事故や違反のリピーター(笑)の存在も指摘されたりする風潮を受けて、厳格化する傾向にあります。
前述の刑事事件を起こしたセラピストに対しては、名称使用停止か免許取消の処分が科せられ、事件の重大性に比例して処分も重くなる傾向にあります。
説明責任
被害にあった方やその家族は『真相究明』を強く求めています。被害者がなぜ不幸な結果に至ったのか、それを説明する義務が加害者側にあります。
説明側に求められる姿勢は──
❶ 嘘をつかない
❷ 隠さない
❸ 逃げない
この3つを決してしてはいけないことなのですが、某大学アメフト部の監督とコーチは、フルコンボ達成しましたよね。
その愚かしい行為に対しての結果は──
──皆さんもご存じのとおりです。
不十分な、あるいは不誠実な説明は、被害者感情を悪化させる効果しかありません。
特に医療従事者に関しては、情報提供についてガイドラインが定められています。
● 医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、原則としてこれに応じなければならない。
● 診療記録の開示の際、患者等が補足的な説明を求めたときは、医療従事者等は、できる限り速やかにこれに応じなければならない。
厚生労働省 診療情報の提供等に関する指針より一部引用
ヒヤリハットと事故について
この【ヒヤリハット】というワードを初めて聴いた時、かつての私は鼻で笑ったいました。
なんだ、このオヤジギャグ並みのローセンスなネーミングは!? と──。
当初は何かに魂を売りわたす気分になるので、極力使いたがらなかったものです。
しかし今ではその言葉なしには危機管理について語れなくなるくらいの専門用語な成り上がりました。
ホントに慣れとは恐いものですね。
ハインリッヒの法則
ヒヤリハットを語るときに避けて通れないのがハインリッヒの法則。
業務上のリスクマネジメントについて常に留意している人にとっては耳タコのキーワードですよね。

上は有名なハインリッヒの1:29:300の法則をあらわしたピラミッドです。
つまり、『重傷死亡』などの重大事故1件には、29件の『軽微な』事故が、さらにその下には300件もの『ヒヤリハット(危うく大惨事になる傷害のない出来事)』が起きているんです。
ここまでは周知だと思いますが、さらに私はヒヤリハットの下に『不安全行動』と『不安定状態』をつけ加えました。数にするとヒヤリハットと桁違いの数千になります。
不安定状態と不安全行動
では不安定状態と不安全行動とはなにか。
それらはヒヤリハットや事故の原因になり得ますが、ヒヤリハットにすら結びつかないことが多いです。
下の絵を参照してください。
つまり、それらだけでは必ず事故に結びつくとはいえないけれど、事後が起こった時にその原因となるのです。
他にもタバコに火をつけたりクシャミをしたりして前方不注意になるのも不安全行動の範ちゅうです。
問題なのはそれらの要素が必ず事故に結びつくとは限らないという特徴です。
多くの人が、それを不安定とか不安全と自覚せずにスルーされてしまうため、結果的に繰り返し再現されてしまうというわけです。
現に街に出ればスマホに限らず『ながら運転』を必ずと言っていいほどみかけるでしょう。
それ自体が【無自覚】であることを証明しているのです。
ヒヤリハット報告書は始末書ではない
ヒヤリハット報告を消極的に捉えている人はまだまだ多いと思います。
なぜならば、ヒヤリハットを自らの「落ち度」ととらえる傾向にあるからです。
実際に私は同僚のヒヤリハット報告書を私が読んだことがありますが、具体的な原因などの記載はほとんどなく、最後に「二度と起こさないように気を付けます、申し訳ありませんでした」とだけあり、唖然としたものです。
これでは反省文や始末書の類です。
ヒヤリハット報告書を書くことで、上司から叱責を受けたり、自分の考課が下がったりするんじゃないかというわけです。
その考え自体、そもそも自分ファーストであることを自覚すべきです。
ヒヤリハット報告とは、結果的に事故の防止だけでなく、サービスや仕事の質を向上させるためにあるのです。
この考え方はわれわれ働き手だけではなく、雇用側にも浸透させる必要があると思います。
具体的にヒヤリハット報告は何のためにあるのか。
❶自分がやってしまう事は他人もやってしまうから
同じ不安定状態のもとではほかの職員も同じような反応を示しやすいもの。
つまり自分がヒヤリとしたならば、他の人も同じようにヒヤリとしてしまうに違いない。
悪くすれば自分は未然に危険に気づいてヒヤリとしただけですんだが、次の人は気づけず事故になってしまう可能性もあります。
そういう意味で自分が事例として挙げて対策を立て、【次の人】が大きな事故を起こしてしまうのを防がなければならないのです。
❷防ぐことができた理由の分析にもなる
ヒヤリとしたケースというのは、言い方を代えれば事故にならずにすんだ成功事例なんです。
それを「よかったよかった、チャンチャン♪」で終わらせるのではなく、「なぜ事故を防ぐことができたのか」という視点での検討方法は、ミスを事故にしないための具体的な情報を得ることにつながります。
ヒヤリハット報告に必要な情報とは?
今までヒヤリハット報告というものを消極的にとらえていたのに、いきなり「さあ書け」といわれても、何をどう書けばいいのかわかりませんよね。
ヒヤリハット報告書は、それ自体が『事故防止』にならなければ意味がありません。
ではそのように書けばよいか──
5W1Hを明確に!
まずこれあらゆる報告の原則です。
なぜこの大原則をあえて挙げているのかというと、あまりにも出来ていない人が多すぎるからです。
❶ When(いつ)
❷ Where(どこで)
❸ Who(誰が・誰に)
❹ What(何を)
❺ Why(なぜ)
❻ How to(どのように)
ここを押さえておけば、大概の報告書は作成可能です。
できるだけ多くのヒヤリハットの原因を列挙する
今さらですが、ヒヤリハットの原因とは『不安定状態と不安全行動』のことです。
この二つの要素がヒヤリハットの原因究明と事故防止の肝となるのです。
無理に文章にする必要はありません。
箇条書きで構いませんので、可能な限り多くの不安定状態・不安全行動を列挙してください。
そのためにはヒヤリハット直後の記憶が鮮明なうちが最適です。
時間が経つにしたがって、記憶がおぼろげになり、自分に都合よく上書きされる可能性もあります。
めんどうでもその日のうちに作成してください。
個人レベルで事故を予防するには
ここまでリスクマネジメントとは情報共有が重要であると述べてきました。
個々のレベルでわきまえておく事ももちろんありますので、最後に挙げておきたいと思います。
❶ 仕事の手順を理解する。要らない手順を入れたり元々の手順を省かない。
❷ 危険な場所、リスクの高い作業を理解する。
❸ 状況の確認を怠らない、放置しない。
❹ 他人の仕事と割り切らない。いざという時はフォローする。
❺ 周囲との人間関係をみだりに悪化させない
❻ 「自分だけは大丈夫」なことなど何ひとつない。
以上、ここまで読んでいただいてありがとうございました!
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