【実習生必読】統合と解釈の書き方大全

昨今では実習生の負担となっているレポート課題をなくすべき、という声が大きくなっています。
しかし養成校の実習での目標が『統合と解釈』や『ゴール設定』などと唱えている以上、簡単になくなるものではないでしょう。
学生諸君は「統合と解釈」と聞くだけで、食欲不振や頭痛、吐き気、動悸が出現するのではないでしょうか?
ほかの項目はサクサクと効率よく作成できるのに、統合と解釈に差し掛かるとキーボードを打つ指が急停止してしまう。
かつて私が学生の時分もそうでした。
以前に私はこのブログで実習レポートについて挙げました。
今回は全国の実習生のために、『統合と解釈』に特化してわかりやすく述べていきましょう。
統合と解釈での禁忌事項
最初に何をするかではなく、何がNGなのかを挙げましょう。
その方がわかりやすい。
NGな内容
❶ 問題点の抽出との内容不一致
❷ ソースや検証のない仮説立て
たったこの二つだけですが、この二点のうちどちらかだけが当てはまっても、その統合と解釈は読むに値しないと断言しておきましょう。
『統合と解釈』は後回しにしよう
何から書いていいのかすらわからない──
気持ちはわかりますが、そうやってキーボードの前で固まっていても、生産性は何ら上がりませんので、ひとつ提案をしましょう。
それは問題点の抽出から着手する、というものです。
それはいくらなんでも順番逆じゃね?
──と思われるかもしれませんが、大丈夫です。
どの順番で書いたかなんて、誰も分かりゃしませんよ(ゲス顔)。
それは冗談として──。
そもそも『問題点の抽出』というのは、患者の障害像を、最も端的に国際分類の形(ICFかICIDH)で表したもので、
『統合と解釈』を国際分類であらわすと、こうなっちゃいました!!」
と考えてもいい。
なので禁忌事項の❶で挙げたように、『統合と解釈』と『問題点の抽出』が内容的にそれぞれ独り歩きしている──
なんてことは絶対にあり得ないんです。
また、先に『問題点の抽出』から始めた方が、障害の本質が把握しやすいというメリットがあります。
教員時代に「トイレ動作に介助が必要なため問題である。よって理学療法が介入しなければならない」と実習中のレポートに書いている学生がいました。
私はその学生に「トイレ動作の何が困難でどのような介助がどれくらい必要か。そしてその介助を軽くするためにどういった理学療法が必要か」と訊きましたが、学生は何も答えられませんでした。
右も左もわからない状態でムリヤリに統合と解釈から取りかかったわかりやすい例ですね。
しかし『問題点の抽出』から行っていれば、そのようなフンワリとした把握の仕方もありえません。
なぜならば『問題点の抽出』という作業は、「WHY?」の連続で最終的には機能制限までつきつめる、いわば障害の「素因数分解」のようなものだからです【下図参照】。
このフローチャートは排泄動作のあくまでも一例ですが、同じ排泄動作でも他に問題となりうる項目はまだまだあります。
◆排泄行為で問題となりうる動作◆
- トイレのドアを開け閉めする
- 便座に座る
- 座った状態でバランスを保つ
- お尻を拭く
- 立ち上がる
- 下衣を脱ぎ履きする
- 方向転換をして水を流す
- ドアを開ける
えっ、どこの本に書いてあるかって?
そんなもの知らないし必要ありませんよ。
だって、誰しも1日に4~5回はトイレに行くでしょう。
それを脳内再生しただけですよ。
上記の動作のうちのどこが困難で、なぜそれが困難なのかを、どんどん「なぜ」をくりかえして元凶を絞り込んでいけばいいんです。しかもそれはひとつとは限らないので絞りすぎなくてもいいんです。
他の動作も同じです。
それぞれの動作のどの局面が問題なのかを浮き彫りにするだけです。
ただし気を付けなければならないのは、今の問題点ではなく、退院後に予想される問題点でなければならないということ。
つまり、家族構成、キーパーソン、キーパーソンの生活サイクル(キーパーソンが働いているなら日中は独居となるため)、家屋構造、本人の社会的な参加状況などの情報と照らし合わせて問題となる内容でなければなりませんので、もちろん事前の情報収集は必須となります。
構成も意識しよう
『問題点の抽出』が骨格とするならば、『統合と解釈』はそれに肉付けする作業。
ただしその前にふまえないといけないのは、文章の構成です。
その構成は、序論・本題・しめくくりの3部仕立てとします。
あ~やっぱめんどくさくなってきた(-_-;)
まあそういわずに私の話を聴いてください。
そんなにややこしくはありませんので。
まず、『統合と解釈』というのは語りかけです。
どの対象は誰かというと、他でもない実習の担当指導者です。
つまり、『統合と解釈』は実習指導者に対して申し送るつもりで書けばいいんです。
あなたは指導者に患者の申し送りをするときに、いきなり歩行がどうだとか、食事動作がこうだとか言います?
間違いなく「ちょっとちょっと待った!」とあなたの話を遮って、「この人はそもそもなんで今この状況なのか説明してよ」といわれるのがオチです。
──何となくわかってきましたか?

まず序論では本題に入りやすいように、個人的な情報と医学的な情報を簡単に書きます。
レポートの場合、既にそういった情報は患者情報で記載しているはずですので、要約で構いません。
さあ、読み手が患者の大まかな像を捉えたら、いよいよ本題に入りましょう。
本題で記載する優先順位
ひとことで活動制限と心身機能の関連性の立証といわれても、どの活動制限から書けばいいのか迷いませんか?
例えばADLの各項目にしても、ちゃんと優先順位はあるんです。
下図をご覧ください──。
私としては、ADLの各項目の橋渡しを担う、移動・移乗は文字通り筆頭に置いておきたいところです。
次にくるのは『食事』と『排泄』ですね。
──え?なぜかって?
品のない表現で申し訳ないですが、「食う」ことと「出す」ことは生きるために必要ですが、それ以外はできなくても死にませんから(酷)。
ソースがないと、それはただのサル私見である
私は今までに学生の実習レポートで、
本症例の歩行の自立困難な原因として、膝関節の疼痛と足底感覚の異常が挙げられる。
などというクソ文章を腐るほど読まされてきました。
私に言わせれば、
──だからどうした?
ですw
それだと問題点の抽出と同じ『骨格』であり、何の『肉付け』もなされていない。
せめてそれまでに行った、障害の素因数分解の過程部分くらいは記載してほしいですね。
あと、自分が立てた仮説を後押ししてくれる文献などのソースも用意したいところ。
胡散臭い内容のソースを引き出してくる学生がたまにいますが、出どころを訊いてみると、大概は「ネットです」と答えます。
そしてそれらのほとんどのは、あの『ウィキペディア』がソースだったりする。でなければどこかのクリニックのトピックスなんですね。
100歩譲って、クリニックのトピックスは記載者が明記されているとして、ウィキペディアにはそれがない。しかも複数の人間の記事を集めることで成り立っている。
そして論文のように査読もなされていない。
当然の結果ですが、誤った情報が掲載されていることが多い。
なので実習においても、学生がレポートの参考文献としてウィキペディアを使用したことが発覚するのは以下のパターンです。
指|おい、ここの理論メチャクチャじゃないか、ちゃんと資料調べたのか!?
学|はい、資料にはそのように書いてありました。
指|どの文献だ?
学|はあ、文献というかネットですが。。
【以下略】
若者の間では、意外なほどに『ウィキペディア万能説』が広まっているようです。
でも楽をしたしっぺ返しはけっこう痛いですよ。
最近では論文がPDF形式で落ちていたりします。
それらを参考文献として使用する場合は少なくとも、①どこの誰が、②いつ発表して、③どのジャーナルに掲載されたものかくらいはわかっているものにしましょう。
以上をふまえ、前述のレポートの内容を少しましなものにしてみましょう。
本症例の右のフォアフットロッカーが消失しており、これがストライド、さらに歩行スピードを低下させている一要因となっている。ロッカー消失には、検査結果から腓腹筋筋力の低下とMTP伸展可動域の低下が影響しているものと思われる。〇〇によれば……
〇〇というのは参考とする文献の筆者のことで、論文の筆者が複数の場合は『〇〇ら』とくくればいいのです。
色々と書きすぎました──。
いわゆる論理的な文章を書くためにおさえるべきポイントは3つです。
❶ 自分がこうと考える『主張』
❷ 主張を訴える『理由』
❸ 理由を補強する『事実』
古賀史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』より引用
本題が「ヒト」の評価なら、しめくくりは「人」の評価である
さあ、本題が活動制限の検証とするならば、しめくくりは参加制限の検証です。
そのためには次の情報が必要です。
❶ 対人関係(家族・知人など)
❷ 職場・通勤
❸ 趣味や団体参加
この検証によって患者個人の生活での問題を明るみにすることができるのです。
まとめ
さて、この記事を読み終えたあなたは、以前に比べて『統合と解釈』を書くコツみたいなものをつかみましたか?
少しでも頭の中の考えを文章化できる一助になれば幸いです。
今回は下の書籍を参考にしました。
私はブログ記事を作成するのに、非常に助かっています。
学生の頃に出会っておけばよかった──
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
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